良いマスタリングのために【ラウドオーディオ】

良いマスタリングのために

近年、高性能なDAWが多数発売されているおかげで個人でも簡単に楽曲を制作し、CDやネットでリリース出来るようになりました。それに伴い、マスタリング作業の重要性もインディーズアーティストの間でも認識され、ラウドオーディオの方でも数多くのアーティスト、企業の方の音源のマスタリング作業をさせていただいております。ただ、マスタリングの為にラウドオーディオに送られて来る素材もプロレベルの音源からミックスダウンまでの段階で相当難のある音源が存在するのも事実です。上手なレコーディングやミックスダウンにはそれなりの機材環境や経験がモノを言います。しかし、予算や時間的制約の関係でレコーディングやミックスダウンをプロエンジニアに依頼するのも難しい場合もあるでしょう。そのような場合、御自身や仲間内で仕上げる事になるとは思いますが、ちょっとした工夫で完成度がグッと上がる場合がございます。以下にはこれまで百曲以上のミックスダウン、数千曲のマスタリングをラウドオーディオでさせていただいた経験からの簡単なミックスダウン時の注意点を書いてみたいと思います。

ミックスダウン全般について注意点と工夫点

1:ミックスダウンの際、マスタートラックにはコンプ、リミッターのエフェクトは掛けないようにしましょう。マスターフェーダーを上手く調整してコンプ、リミッターを掛けない状態でレベルメーターのピーク表示が「-1dB ~ -0.5dB」程度になるくらいで調整して下さい。あまりギリギリまで大きくした状態だとマスタリング時の音作りのコントロール幅が小さくなり、良い結果が得られない事があります。ただし、ドラム、ボーカル等の各トラックに関しましてはコンプやEQ 、リバーブ等を使って自由に音作りをしていただいて問題ございません。なお波形編集ソフトでミックスダウン済みのファイルを開いた時に「この程度の波形だとマスタリングがやりやすい」という波形イメージを下記に載せておきますので参考にしてみて下さい。(*1)

pic1.jpg
(*1)上記の図はBIAS Peakでファイルを開いた時の一例です。これよりもう少し小さくても大丈夫かもしれません。


:マスタリング作業の際、お客様からある音作りのリクエストで、「ハイハットをもう少し前に出して欲しい」「ギターを出して欲しい」「バスドラを出して欲しい」等の個別の楽器の音作りにや音量アップに関するモノがかなり多くございます。マスタリング作業とは言ってみれば、人間にとってのお化粧みたいなものであり、曲の全体的な雰囲気、アルバムであれば他曲とのバランス、適正な音量音圧を揃えるための作業です。ですので化粧と同じで素の状態(マスタリング前の状態)が良くないと決して良い結果は得られません。各楽器の音量バランスはマスタリング作業の段階になってしまうと個別楽器の調整は「気持ち程度」しか出来ません。ミックスダウンの段階でしっかりした音作りを心がけましょう。どうしても個別楽器の音量が気になる場合は、面倒でも一度ミックスダウンの作業をやり直す事をお勧め致します。


:「☆☆☆というアーティストの様な音にしてください」、、、これも多い御要望のひとつです。ただ残念ながらマスタリング前のミックスダウンが完了した段階で☆☆☆というアーティストの音になっていない場合が殆どです。音楽を作る場合、その大まかな方向性はミックスの時に決まってしまいます。目標とするアーティストの音に近づけたいのであれば、ミックス前に何度も何度も聴き込んで、バスドラやスネア、ハイハットの出方や音質、ギターの音質やパン等、ありとあらゆる事を細かくチェックしてミックスダウンに臨みましょう。ただし、どのメジャーなプロアーティストもそうですが、そのアーティストしか出せない音というのがあります。それはスタジオ環境であったり、特注のエフェクトだったり、有名プロデューサーやエンジニアの長年のノウハウであったり、CDプレス工場の違いだったりしますので、そう簡単にマネの出来るモノではありません。御自身の作品のレベル向上のために好きなアーティストの音を細かくチェックし学ぶ事は大切ですが、万が一、ミックスダウンやマスタリング後に同じような音質にはなっていなかったとしてもあまり気にしたり比べたりしない事です。「自分には自分の音がある」、そう割り切り自信を持つ事も大切です。

ヴォーカルの処理について

:ミックスダウンの段階でのボーカルの音処理は非常に重要です。インディーズのレコーディングではベストな環境や高額なマイク等を使用しての録音は御予算や時間の関係でなかなか難しいとは思いますが、「ブレス処理」「低域処理」だけはしっかり作業しておきましょう。ボーカリストの声は千差万別です。機材の違いやマイキング以外にも男性か女性か、声が低いか高いか、その歌い方によっても全くその処理方法は変わってくるとは思います。結局は何度も自分に合ったマイキングを試してみるしかないのですが、最低限マイクにブレスを吹きかけないようポップフィルターは使用しましょう。楽器店やネット通販でで3,000円程度で購入可能です。また、レコーディングの際はハンドマイクは出来るだけ避け、マイクスタンドを使用し、ボーカルのレコーディング中には足でリズムを取ったりしないようにしましょう。その振動をマイクが拾ってしまう場合があります。


:録音されたボーカルトラックの処理ですが、多くの場合、その低音域はバッサリとカットしてしまった方がモコモコ感が減り、すっきりした音作りが可能になります。多少マイクにブレスが掛かってしまっていても、低域をカットする事で、言葉は良くないかもしれませんが、ごまかす事が出来たりします。ボーカリストの声の特性によって EQ のセッティングは異なりますが、参考例としてプラグインのEQセッティングを載せておきます。(*2)

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(*2)上記の図は Apple Logic Pro 7 でミックスダウン時のヴォーカルトラックのEQ セッティングの一例です。
個人の性別、声質、楽曲の方向性によって変ってきます。

ミックスダウン時の各トラックのリバーブの処理について

:マスタリング作業とは簡単に書いてしまいますと小さな音を上げて、大きな音は押さえ気味にして、音量の均一化をはかる作業です(もちろんこれ以外にも様々な目的がありますが)。つまり、その際、後ろに隠れていたリバーブ成分も前に出て来てしまうという事になります。例えば、ミックス時にボーカルトラックに掛けたリバーブはマスタリング後に聴いてみると予想より深くなっている事があります。ボーカルのリバーブというのはその楽曲の雰囲気や、また神秘性を演出したり等の様々な効果があったりします。その効果を狙った通りの確かなモノにするには、マスタリング後のリバーブの状態を予想して掛けるエフェクト量を決める必要があります。その楽曲全体のミックスダウンのレベルや各楽器の音量との関係、マスタリング時のレベル等によりなかなか一概に言えないのですが、「これくらいかな」と思うリバーブ量から5~10%程度減らしてミックスすると狙った効果が出る事が多いようです。深いリバーブを掛ける場合は特にこの傾向が強いと思います。




2011.6.16更新